1/144 バンダイ HG MS-14S ゲルググ

シャア「ララァ、ヤツとの戯言はやめろ!」
2022.6 製作
お気に入りランク:★★★☆☆  レア度:★★★★☆

一年戦争中期地球連邦軍のMSの開発が加速したため、ジオン公国軍がMS-06ザクⅡに代わる次期主力機として初めてビーム兵器を標準装備したMSがゲルググです。
基本設計はザクⅡを開発したジオニック社、バーニア系統はヅダやドムを開発したツィマッド社、ビーム兵器はズゴックを手掛けたMIP社が担当し、ジオン公国軍が総力を挙げて開発した機体となっています。数値上の性能はガンダムと同等以上の性能を誇っており、その高性能から遅すぎた名機とも呼ばれ、戦後もジオン残党軍などでも長く使用されました。
しかしながら、一年戦争末期に投入されたア・バオア・クー戦までにパイロットの多くが戦死し、パイロットの養成不足の上に、慣れたザクⅡやリック・ドムに搭乗する兵士も多くいたようです。さらに学徒動員が多かったことも劇中で語られています。後にゲルググの量産化があと1か月早ければ一年戦争の結果が変わっていたかも知れないとも語られています。
なお、シャアが搭乗した機体は先行量産型のYMS-14(MS-14S)であり、キシリア・ザビの影響力があったものと思われます。 第37話「テキサスの攻防」で登場したゲルググはテキサス・コロニーでガンダムを追い込むものの、覚醒したアムロ・レイのニュータイプ能力の前に後退せざる負えませんでした。その後エルメスに搭乗するララァ・スンとガンダムとの交戦のダメージからア・バオア・クーでの最終決戦にはゲルググの修理が間に合わず、試作機ジオングへとシャアの搭乗機は引き継がれたのです。

Photo Gallery


製作過程

私のファーストガンダムのお気に入りMSはジオン系なのですが、その中でも一番のドムに次いで好きなMSがゲルググなのです。
いかり肩にスカートのような足の装甲が放映当時から好きで、旧キットでも製作した記憶があります。現在手元にあるゲルググのキットとしては「HCM-Pro 31-00 1/200 MS-14S シャア専用 ゲルググ」と「1/250 ガンダム情景模型 テキサスの攻防」を組み合わせたジオラマなのですが、このHCM-Proのゲルググのスタイリングが小さいスケールながらも素晴らしい完成度でした。それに比べて”ドムに外れなし、ゲルググに当たりなし”いうモデラー達の格言があるようにMGにおいてもキットとしての魅力は薄く、本キットもパーツの合わせ目消しが避けられないキットの上、スタイリングがイマイチのためにこれまで製作をためらっていました。
そして、このキットもコロナ渦の巣ごもり需要や転売ヤーの横行によって、ガンプラが定価でも買えるだけでもありがたいという世間の空気に流され、2022年4月ららぽーと福岡のガンダムサイドFオープンにあたり、「RX-93ff νガンダム」と同時に購入することになりました。 

 

1.イメージ

ゲルググ

取扱説明書の完成見本を見た印象はやはり顔にシャープ感がない、肩が大き過ぎ、胴が短過ぎる、足が短過ぎる・・・などでパーツの合わせ目消しにもそれなりの覚悟が必要です。

  1. ネット上のモデラーの製作過程を参考にディテールアップポイントを取扱説明書に書き込みます。
  2. 段落ちモールドを併用しながら、パーツの合わせ目消しを積極的に行います。
  3. 後ハメ加工を施します。
  4. 頭部と肩部のシャープ化を施します。
  5. ジャンクパーツを活用しながら、身長延長のための加工を施します。
  6. 基軸パーツやバーニアに金属感を持たせるためにガンメタルで塗装します。
  7. 装甲裏をジャーマングレイにしつつ、併せてシャアピンクの機体色を暗くさせるための下地塗装としても活用します。
  8. 定番のモノアイ加工に加えて、コクピットハッチも差別化します。

2.仮組み

ゲルググ

なんとまさかの仮組み完成!
このサイト初の仮組みからのスタートです。過去のサイトでも述べた通り、①2度手間で面倒くさい②取扱説明書の部品番号がわからなくなりやすい③パーツの紛失リスクを避けたい④パーツの破損リスクを避けたい⑤最後の組み立てで完成する喜びを味わいたい・・・などの理由から、これまで仮組みについては省略していましたが、今回は古いキットでパーツの加工が多発するためにその組み合わせを事前に把握する必要があることと、部品点数が少ないことから、事前に組み上げることとしました。
いつも通りのフィニッシングペーパーを使って、ゲート処理を根気よく行います。

3.ディテールアップ1(上半身)

ゲルググ

まずは上半身のディテールアップから取り掛かります。
ネット上の複数のモデラーの作例を参考にディテールアップポイントを検証しました。

  • 定番のブレードアンテナのシャープ化と豚顔の頭部は太り過ぎと感じるので、頬もヤスリます。
  • モノアイレールの中心をピンバイスでくり抜き、ウェーブ オプションシステム「H・アイズ」をはめ込むスペースを確保します。
    (モノアイは3.0mmのクリアーピンク裏にセメダインのラピーミニ キラキラテープを貼り付け、輝きを増します。)
  • 頭部の豚の鼻をピンバイスで穴を開け、貫通させます。
  • 胴体腕の開口部を四角く、完全にくり抜いて可動範囲を広げます。
  • 身長を上げるために、腹部の接続パーツを3mmくらい延長します。ボールジョイントをカットして、3.0mmのジャンクパーツを瞬間接着剤で取り付け、ピンバイスで穴を開け、1.0mmの真鍮線を通して補強します。
  • 肩部のカバーパーツを平面に削り、腕の隙間を縮めます。
  • さらに肩部のパーツの接続部を一部カットして、後ハメ加工を施します。
  • 肩と腕を接続する丸いパーツの開口部を拡大し、可動範囲を広げます。
  • 腕部はパーツの合わせ目消しを施すために丸モールドを削り落とします。

4.ディテールアップ2(下半身)

ゲルググ

続いて下半身のディテールに取り掛かります。
ここでも身長の延長のための加工とパーツの合わせ目消しのための下処理を行います。

  • 膝部の基軸パーツの丸い穴の接続部を外側からカットし、丸い穴側のダボもカットして後ハメ加工を施します。
    ※この後ハメ加工により、足の関節の可動が緩くなってしましました。丸い穴だった箇所に瞬間接着剤で肉付けして、接続部を硬くなるように調整しました。
  • 後ハメ加工のために膝部の装甲パーツの接続部を長方形に削り込みます。
  • 足首の基軸パーツのボールジョイントをカットして、5.0mmのジャンクパーツを瞬間接着剤で取り付け、ピンバイスで穴を開け、1.0mmの真鍮線を通して補強します。
  • 足側の基軸パーツの受け皿となるポリキャップのハネ部分を半分カットし、本来の取り付け位置から90度回転させた位置で取り付けて、足を延長させます。(ポリキャップは塗装後に接着するためにここでは仮組みのみに留めます。)
  • 脚部のサイド上部と装甲後部の長いスカートのパーツの合わせ目は段落ちモールドとし、関節の根元側のみパーツの合わせ目消しを施します。

5.パーツの合わせ目消し

ゲルググ

ディテールアップが完了したら再度仮組みを行い、可動を確認します。
今回パーツの合わせ目消しと装甲裏の塗装にあたって、大胆な下地塗装を行ってみようと思います。

  1. 胸部・腹部・肩部・腕部・膝部・脚部の装甲パーツ、膝部・足首の基軸パーツ、ビーム・ライフルのパーツの合わせ目にたっぷりとタミヤセメントを塗り付けて4、5日硬化を待ちます。
  2. 硬化後フィニッシングペーパーで400番→600番→1000番の順に磨き、最後にスポンジ研磨材で仕上げます。
    最近はタミヤのフィニッシングペーパーに加えて100円ショップのクラフト作業用バッファーも積極的に活用していますが、今回鉄ヤスリを試したところ、効果的に働いてくれました。
  3. 腕部の削り落とした丸モールドの箇所にウェーブ「U・バーニア フラット【1】6.0mm」を接着します。
  4. 各パーツ全体にサーフェーサー(ホワイト)を吹き、必要に応じて研磨を繰り返します。
  5. 乾燥後下地塗装として、外から見える装甲の表裏共にジャーマングレイを吹きます。

6.塗装

ゲルググ

今回装甲裏をジャーマングレイで塗装したいことと、機体色のシャアピンクを明るく可愛らしいピンクではなく、沈んだピンクにしたい意図があるため、下地塗装を含めてジャーマングレイで全塗装します。また、一部の基軸パーツはマスキング対応とし、装甲の塗装完了後に筆塗りします。

  1. パーツの合わせ目消しを必要としなかったピンクの装甲や基軸パーツにも下地塗装としてジャーマングレイを吹いておきます。
    乾燥後ガンダムカラースプレー MSシャアピンクを吹きます。
  2. 胴体部→ガンダムカラースプレー MSシャアレッド
  3. モノアイレール・膝関節と足の黒いパーツ→マットブラック
  4. 肩部のカバーパーツ、腕部基軸パーツ、スカート裏基軸パーツ、バーニア基軸パーツ、バーニア外輪(足裏含む)→ガンメタル
  5. バーニア内輪(足裏含む)→サーフェイサー(ホワイト)+ブライトレッド
  6. ビーム・ライフル→ジャーマングレイ
  7. ビーム・ライフルのスコープ→ガンダムカラースプレー MSシャアピンク
  8. シールド裏→黄色い淵をマスキング+ジャーマングレイ
  9. シールド表→ダークブルー

7.スミ入れ&コーティング

ゲルググ

モールドが少ないこのキットはスミ入れしても効果が薄いとは思われますし、太過ぎるスミ入れは逆効果になりそうなので、ガンダムマーカーよりもシャーペンをメインにして控えめなスミ入れを心掛けます。
また、つや消しは一部パーツを除外して行い、メリハリを付けます。

  1. 「ガンダムマーカースミいれ用<ブラック>」でシャアレッドのパーツにスミ入れを行い、タミヤ アクリル塗料溶剤ではみ出したラインを丁寧に拭き取ります。シャアピンクのパーツはシャーペンでスミ入れを行います。
  2. バーニア内輪のみ「Mr.ウェザリングカラー マルチブラック」でスミ入れし、専用うすめ液で拭き取ります。
  3. モノアイ、コクピットハッチ、バーニア基軸パーツ、バーニア、シールド表面パーツを除外して、すべてのパーツをGSIクレオス「Mr.スーパースムースクリアー つや消しスプレー」でコーティングします。

8.組み立て

ゲルググ

塗装から完了したら、除外しておいたパーツも含めて組み立てを進めます。

  • ウェーブ オプションシステム「H・アイズ」ピンク3.0mmの裏面にセメダインのラピーミニ キラキラテープを貼り付け、輝きを増してモノアイレールにはめ込みます。
    さらにモノアイシールドとしてランナーが入っている透明の袋を切り取り、両面テープでモノアイレール側に貼り付けてパーツを組み込みます。通常は装甲側に両面テープを貼り付けますが、このキットの頭部がタイトなため、この手順でなんとかモノアイシールドを取り付けることが出来ました。
  • コクピットハッチは塗装もせず、つや消しからも除外して取り付け、メリハリを付けることによって塗装したパーツと唯一残った成形色との比較も出来ます。
  • 基軸パーツやバーニアを組み付け、機体本体を組み立てます。
  • シールドを両面取り付け、ビーム・ナギナタも完成させます。

9.仕上がり

ゲルググ

すべてのパーツを組み上げたら、いよいよ完成!と終わりたいところですが、ここでアクシデント発生です。
身長を上げるために延長した胸部や脚部の基軸パーツが瞬間接着剤で接着したにもかかわらず、パーツを組み付けてポーズをとらせると、あっけなく折れたのです。それも真鍮線で補強していたにもかかわらず・・・。そのほかにも脚部関節の後ハメ加工を施したパーツもあっさりと割れました。これらの補修と再塗装に追われる最終工程となりました。
完成後、スケールが合いませんが、「1/250 ガンダム情景模型 テキサスの攻防」のジオラマベースに乗せてみました。
(画像右は「HCM-Pro 31-00 1/200 MS-14S シャア専用 ゲルググ」です。)

製作後記

頭部のシャープ化、パーツの合わせ目消し、後ハメ加工、腹部と脚部の加工による身長の延長、装甲裏の塗装、くすんだシャアピンク機体色・・・など安価なキットにこれまでにない数の工程を加え、完成後のキットのスタイルや色味も当初のイメージどおりに仕上がりました。また、モノアイとモノアイシールドの輝きやコクピットハッチの質感も狙いどおりでした。
しかし、延長した胸部や脚部の基軸パーツや後ハメ加工のパーツの破損により、装甲の内側は継ぎ接ぎだらけとなってしまいました。
反省点として①瞬間接着剤で接着したとは言え、関節の基軸パーツをカットすべきではなかった。②脚部関節のパーツも後ハメ加工ではなく、組み付け後にパーツの合わせ目消しを行い、マスキングして塗装すべきだった。③腕部のパーツの合わせ目の縦のラインは段落ちモールドにしてもよかった。④脚部のサイド上部は段落ちモールドではなく、パーツの合わせ目消しにすべきだった。
完成後改めて考え直してみると、スマートで高身長となったゲルググは本来の魅力である低重心の重量感が損なわれたこと、そして他の1/144スケールキットと共演させた時に生じる身長差を頭に入れるべきだったと気付きました。

今回の経験を今後手に入れることが出来れば量産型ゲルググに生かしたいと思います。

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