1/144 バンダイ HG MS-14A 量産型ゲルググ
トワニング 「は、が、学徒動員のパイロットが多いようですから。」
お気に入りランク:★★★★☆ レア度:★★★★☆
量産型ゲルググはジオン公国軍がギャンとの競合の末次期主力MSとして開発した緑の胴体にグレーの装甲というカラーリングの機体です。
しかしながら、量産型ゲルググは「機動戦士ガンダム」劇中第42話のア・バオア・クーの戦いにおいて登場したものの、移動とGファイターに撃破されるシーンのみでした。
一年戦争末期に投入されたこの頃はエースパイロットや熟練兵の多くが戦死して、訓練不足の学徒動員兵であったために機体の性能を発揮できないまま多くが撃破されたのです。この戦況を見たキシリア・ザビからも酷評され、
撃破された学生パイロットアルバート・ベルが死に際にザクのコクピット内で言った「ああっ!ひっ・・・火が!母さん・・・!!」の台詞は印象的でした。
そのほかにビーム・ライフルの配備が遅れ、代替手段としてメガ粒子砲デバイスを転用したビーム・キャノン装備型バックパックを搭載した機体としてゲルググキャノンも開発されました。
「機動戦士Ζガンダム」第26話では旧ジオン公国軍の戦艦グワジンの中に放棄されていたゲルググをエゥーゴが回収し、レコア・ロンドがジュピトリス侵入に使用したり、百式のメガ・バズーカ・ランチャーの追加エネルギージェネレーターとして使用されました。(この時の量産型ゲルググのコクピットハッチはなぜかピンク色です。)
また、「機動戦士ガンダムΖΖ」第18話ではザクIIとともにアクシズに配備されるなど、その後のシリーズにもゲルググは何度も登場しています。
Photo Gallery
製作過程
一年戦争末期に投入された高性能MSゲルググと言えば、シャア専用ゲルググのカラーリングのイメージが強いですが、今回はア・バオア・クー戦の脇役的存在の量産型ゲルググを製作します。製作目的はファーストガンダムの最終決戦であるア・バオア・クー戦の戦場を長期間掛けて作り上げることにあり、このキットはその第一歩となる位置付けです。
シャア専用ゲルググのキットは比較的店頭への供給が安定してきたものの、量産型ゲルググは入手困難となっている中、ガンダムベース福岡に早朝から並んでなんとか手に入れることが出来ました。
このキットは頭部やバックパックなど一部パーツの差し替えによってゲルググキャノンも再現出来る選択式となっています。武器はビーム・ライフル、ビーム・ナギナタ、3連ミサイルランチャー、バックラー・シールド、大型シールドなどが付属しています。
1.イメージ
2.組み立て1&後ハメ加工1&パーツの合わせ目消し1
今回は仮組みを省略して、加工が必要なパーツから組み立てを開始します。
またシャア専用ゲルググで後ハメ加工にこだわり過ぎて、可動域がゆるゆるになった反省から一部後ハメ加工を回避してマスキングと塗装を併用することにします。
- 後ハメ加工が必要な基軸パーツやポリキャップから先に組み立て、ジャーマングレイで塗装後パーツ内部に組み付けます。
- 胴体腕の開口部を四角く、完全にくり抜いて可動範囲を広げます。
- 肩部のパーツの接続部を一部カットして、後ハメ加工を施します。
- 肩と腕を接続する丸いパーツの開口部を拡大し、可動範囲を広げます。
- 腕部はパーツの合わせ目消しを施すために丸モールドを削り落とします。
ここではシャア専用ゲルググと手法を変えて長いラインは段落ちモールドで対応し、短いラインはパーツの合わせ目消しを施します。 - 膝部の基軸パーツもシャア専用ゲルググと手法を変えて、丸い穴の接続部外側のカットや丸い穴側のダボカットの後ハメ加工は今回取りやめます。
- シャア専用ゲルググで膝部の装甲パーツの接続部を長方形に削り込んだ後ハメ加工は行わず、マスキングと塗装後で対応します。
- 脚部のサイド上部と装甲後部の長いスカートのパーツの合わせ目は段落ちモールドとし、関節の根元側のみパーツの合わせ目消しを施します。
3.パーツの合わせ目消し2
今回は仮組みを省略して、加工が必要なパーツの合わせ目消しから作業を開始し、並行して出来る組み立てと塗装を進めます。
- 胸部・腹部・肩部・腕部・膝部・脚部の装甲パーツ、膝部・足首の基軸パーツ、ビーム・ライフルのパーツの合わせ目にたっぷりとタミヤセメントを塗り付けます。
- 大型クリップでしっかり合わせ目を押さえつけて、4、5日硬化を待ちます。
- 硬化後フィニッシングペーパーで400番→600番→1000番の順に磨き、最後にスポンジ研磨材で仕上げます。
- 各パーツ全体にサーフェーサー(濃いグレー)を吹き、必要に応じて研磨を繰り返します。
4.塗装
ここではまだパーツの合わせ目消しの工程途中ではありますが、作業効率を考えて接着の硬化やサーフェイサーの乾燥を待つ間に一部塗装を進めます。
また、シャア専用ゲルググでは見落としていたのですが、シールド表面に裏面のモールドが浮き出てしまっているのです。今回はしっかりヤスって曲面に磨きます。
- シャア専用ゲルググとは異なり、脚部の後ハメ加工を行いわないために装甲裏の仮塗装をフラットブラックで筆塗りし、装甲の塗装完了後に再度補正塗装を行うことにします。
- 先に塗装を済ませておいた脚部基軸パーツをマスキングして取り付けます。
- 脚部のサイド上部と装甲後部の長いスカートのパーツの合わせ目はシャア専用ゲルググでは段落ちモールドとしましたが、ここでは後ハメ加工を施します。
合わせ目が深いために瞬間接着剤でしっかり接着し、硬化の時短のために初めてアルテコ「瞬間接着剤用硬化促進剤 スプレープライマー」を吹きました。 - 関節の装甲根元はタミヤセメントでパーツの合わせ目消しを施します。
- シールド表に浮き出ているモールドをしっかりヤスり、サーフェイサーで厚みを増して塗装します。
- 胴体部・スカート→レーシンググリーン
- 装甲→ガンダムカラースプレー MSグレージオン系
- 腰基軸パーツ、接続パーツ、ハンドパーツ→ジャーマングレイ
- モノアイレール・膝関節と足の黒いパーツ→マットブラック
- 各部装甲裏→フラットブラック(筆塗り)
- 肩部のカバーパーツ、腕部基軸パーツ、スカート裏基軸パーツ、バーニア基軸パーツ、バーニア外輪(足裏含む)
ビーム・ライフルのパイプ部→ガンメタル - バーニア内輪(足裏含む)→サーフェイサー(ホワイト)+ブライトレッド
- ビーム・ライフル→ジャーマングレイ
- ビーム・ライフルのスコープ→ガンダムカラースプレー MSシャアピンク
- シールド裏→黄色い淵をマスキング+ジャーマングレイ
- シールド表→ダークブルー
5.ディテールアップ
シャア専用ゲルググで行った身長延長のための加工は今回行わないため、ディテールアップは少なめです。
- モノアイレールの中心をピンバイスでくり抜き、ウェーブ オプションシステム「H・アイズ」をはめ込むスペースを確保します。
(モノアイは3.0mmのクリアーピンク裏にセメダインのラピーミニ キラキラテープを貼り付け、輝きを増します。) - 頭部の豚の鼻をピンバイスで穴を開け、貫通させます。
- 腕部の削り落とした丸モールドの箇所にウェーブ「U・バーニア フラット【1】6.0mm」を接着します。
6.スミ入れ&コーティング
すべてのパーツを組み立てずにパーツごとの状態でスミ入れを行います。これはスミが基軸パーツに流れることによって起こるクラックを避けるためです。
- 「Mr.ウェザリングカラー マルチブラック」でスミ入れします。うすめ液を使って綿棒で拭き取ったら、クラック防止のためにドライヤーで速乾させます。
- コピック マルチライナー<ブラック>0.03mmとシャーペンで補正します。
- 細心の注意を払ったつもりですが、一部の指でクラックが発生しました。瞬間接着剤で補修します。
- モノアイやバーニアを除いてGSIクレオス「Mr.スーパースムースクリアー つや消しスプレー」を吹きます。
7.組み立て2
塗装から完了したら、バーニアなどつや消しから除外しておいたパーツも含めて組み立てを進めます。
- ディテールアップしたモノアイをモノアイレールにはめ込みます。
さらにモノアイシールドとしてランナーが入っている透明の袋を切り取り、両面テープでモノアイレール側に貼り付けてパーツを組み込みます。通常は装甲側に両面テープを貼り付けますが、このキットの頭部がタイトなため、この手順でなんとかモノアイシールドを取り付けることが出来ました。 - コクピットハッチはここだけ塗装せず、つや消しからも除外して取り付け、メリハリを付けることによって塗装したパーツと唯一残った成形色との比較が出来るようにしました。
- 基軸パーツやバーニアを組み付け、機体本体を組み立てます。
- シールドを両面取り付け、ビーム・ナギナタも完成させます。
8.仕上がり
すべてのパーツを組み上げたら、いよいよ完成!と終わりたいところですが、どうも製作ポイントだった機体色の色味が納得出来ません。
装甲のガンダムカラースプレー MSグレージオン系は良しとして、胴体部は当初ガンダムカラースプレー MSディープグリーンを吹きましたが、地味な色味のためにボックスアートに近いレーシンググリーンを採用しました。
しかしながら、つや消しを吹いてもおもちゃ感を消せませんでした。劇中のゲルググの映像を見るとかなり薄い緑で、やはり地味なのです。改めて量産型という位置付けを認めて当初のガンダムカラースプレー MSディープグリーンに塗装し直すことにしました。
完成後、シャア専用ゲルググと並べてみました。
9.ウェザリング
最終目標であるア・バオア・クーでの戦場ジオラマに向けて量産型ザク、旧ザク、リックドム、ジム、ボールとともにウェザリング仕様に仕上げます。
地上戦ではないためにブラウン系の砂ぼこりを避けた汚しを意識します。連邦系MSとの差別化のためにウォッシングやウェザリングマスターでの汚しを施します。
- 装甲の汚れをガンダムマーカー リアルタッチマーカー(グレー2)でウォッシングします。
- メラミンスポンジでグラデーションを意識しながら拭き取ります。
- タミヤ「ウェザリングマスターセットB、C」で装甲裏やエッジを意識しながらグラデーションを描きます。
- 赤錆としてクリアーオレンジで描きます。
- アクリルガッシュのバーントアンバーで錆や傷のドット、雨垂れを表現します。
- エナメル塗料のクロームシルバーをスチールウールタワシに付けて金属のはがれを表現します。
- 同じエナメル塗料のクロームシルバーでドライブラシをエッジを中心に掛けます。
- ホワイトのパステルを茶こしでこして、筆でハイライトを描きます。
- ビーム・ライフルの砲身やバーニアのすすをフラットブラックで描きます。
- 「GSIクレオス Mr.スーパースムースクリアー つや消しスプレー」を吹きます。
ジオラマ作品「ア・バオア・クー」に配置します → 機動戦士ガンダム > 1/144 バンダイ HG MS-06 ザクⅡ を参照
製作後記
さて、今回は最後の最後に胴体色を塗り替えるという荒技に出ましたが、結果的に量産型にふさわしい機体色に落ち着きました。
シャア専用ゲルググの反省点を踏まえてパーツの合わせ目消しの精度も少し上がった気がしますし、関節部の過剰な後ハメ加工を避け、マスキング塗装で対応することによって安定したポージングを確保出来ました。身長を延長したシャア専用ゲルググと並べると、こちらの方が重心が低く重量感もあり、ゲルググらしく感じます。
また、 Photo Galleryの撮影のために量産型ゲルググの登場シーンを調べていたら、「機動戦士Ζガンダム」や「機動戦士ガンダムΖΖ」においても印象的なシーンで登場していることが認識出来ました。
なお、本キットはア・バオア・クー戦でのジオラマに配置予定ですので、古いキットのおもちゃ感を消すためにも最終的にウェザリング仕様にする予定です。
2023.3 Galleyにジオラマ画像、製作過程に ”9.ウェザリング” を追加。
シャア専用ゲルググでの反省点を量産型ゲルググに生かして製作に取り組みます。前回とはディテールアップポイントを変えながら、製作手順も前回とは変更して作業を進めます。
ボックスアートと取扱説明書の完成見本を見て気になることは、機体色の色味です。特に胴体部はまるで違う色味ですし、映像を見るとさらに悩んでしまいます。この点はシャア専用ゲルググではなかった製作ポイントになりそうです。